top of page

なぜ医療に「CCRM」という考え方が必要だったのか

  • 執筆者の写真: 佳嗣 廣川
    佳嗣 廣川
  • 6月10日
  • 読了時間: 4分

CRMの再定義から生まれた地域医療モデル



「医療業界って、CRMの概念ないよね」


ある夜ある会食にて、代表の廣川が医療関係者と交わした何気ない会話の中で、ふと投げかけられた一言。

それは、彼のこれまでのキャリアと、これからの医療の在り方をつなぐ“気づき”のきっかけとなりました。


廣川は、もともとCRM(Customer Relationship Management)の概念すら一般的でなかった頃から、IT業界でソフトウェアを営業として販売してきた経験を持ちます。

「顧客との関係をいかに継続的に築くか」──この視点を持ってプロダクトや仕組みを提案することは、彼にとって“当たり前の戦略”でした。


だからこそ、「医療にはCRMがない」という言葉は、逆に強い違和感として響いたのです。




■ 医療における「関係性」の不在に、ビジネスの視点で切り込む



現状の多くの医療機関では、来院・受診があって初めて診療が行われる、いわゆるリアクティブ(受動型)な関係性が主流です。

しかし、現代の地域医療が相手にしているのは、慢性疾患や高齢者、在宅療養者といった、長期にわたり継続的なケアが必要な方々です。


つまり、医療もまた「関係の維持=LTV(ライフタイムバリュー)」を重視すべきサービス産業であるという視点が必要になってきています。


ここに、廣川の中で「CRM的発想を医療に活かすことができるのではないか?」という仮説が生まれました。




■ 医療に特化した“関係性マネジメント”=CCRMという発明



この仮説に強く共鳴したのが、共同代表で家庭医でもある森でした。

森は、患者の病状だけでなく生活背景や価値観に至るまでを含めた“人そのもの”を診るという家庭医療の実践を続けてきました。


廣川の「CRM的視点を医療に」という発想を聞き、「それなら、“Community Care Relationship Management”が良いのでは」と命名。

こうして、CRMの思想を地域医療に応用した形で生まれたのが、CCRM=Community Care Relationship Managementです。


CRMが企業と顧客の関係性を管理・発展させるものであるならば、

CCRMは医療機関と地域住民との間にある“信頼関係”や“生活文脈”を、継続的かつ構造的に支える仕組みと言えます。




■ なぜ“CCRM”が医療現場に必要とされているのか



医療業界にCRM的アプローチが根付きづらい背景には、「患者は来るもの」「診ることが医療」という暗黙の前提があります。

しかし、現実には医療アクセスが困難な人も増え、外来や入院だけでなく在宅や非接触型の支援の重要性が高まっています。


この変化に対応するには、「診察時だけ関わる」モデルでは限界があります。


  • 患者の状態が変わったタイミングに気づく

  • 日常の文脈の中で支援の必要性を把握する

  • 多職種・家族とも患者像を共有しやすくする



こうしたニーズに応えるためには、診療記録とは別に、“生活や感情を含めた患者像”を蓄積・管理する仕組みが求められます。


これを可能にするのが、PrimaryTouchのAIエージェントによる日常的な聞き取りと、その情報の要約・可視化です。

「最近、外出が減っている」「家族との会話が減った」「趣味に関する話題が少なくなった」──

そうした定量化しにくい“背景”が、エージェントとの対話データから浮かび上がります。




■ CCRMは医療の継続性と経営基盤を両立させる



家庭医療や地域医療では、患者一人ひとりと長く、深く関わることが求められます。

これは、短期的な成果よりも**“継続的な支援”によって信頼を積み重ねるビジネスモデル**とも言えます。


  • 患者のLTVを高める

  • 医療機関のブランディングを強化する

  • 離脱・不安・クレームの予兆を早期に察知する



こうした観点で見ると、CCRMは医療の質を保ちつつ、持続可能な医療経営にも貢献するインフラだと位置付けられます。


単なるITツールではなく、地域との関係性を構造化するレイヤー

それが、CRMから発想を広げたCCRMという概念です。




■ 最後に:技術ではなく、思想としての“CCRM”



私たちは、医療にCRMという“異文化”を持ち込んだわけではありません。

むしろ、すでに医療者が現場で無意識に行っていたことを、構造化し、言語化したのがCCRMです。


「診察時の会話の中から“その人らしさ”を掴みたい」

「気になる患者さんのことを、次回の受診前に知っておきたい」

「本当に必要な支援がどこにあるかを、職種を越えて共有したい」


こうした想いを、テクノロジーでそっと支える。

その先にあるのは、より患者に寄り添える医療機関として“選ばれ続ける”未来です。


CCRMは、医療の現場と、経営の現場の“真ん中”を結ぶ新しいフレームワーク。

信頼、継続、関係性──医療が本来持っていた価値を、あらためて可視化し、育てていく土台になると、私たちは信じています。

 
 
bottom of page